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ヴィヴィアン・ウエストウッド展
松原 慈
「素敵な服は、素敵な場所へ連れて行ってくれる。素敵な経験と人生を、あなたに選ばせる。」と、迷いなくヴィヴィアン・ウエストウッドが言い、あなたは納得して、ぴんと張った綱を渡る。転げて落ちないよう、慎重に。挫けないよう、堂々と。 「ファッションは綱渡り。馬鹿にされることを恐れずに、もし綱の上を歩き続けることができたら、すべては拍手喝采に変わるのよ。」 2004年の春、ロンドンのヴィクトリア&アルバートミュージアムで開催された展覧会『ヴィヴィアン・ウエストウッド展』は、春が過ぎてもなお、惜しまれて開催期間を延長、ロンドンの美しく揺るぎないパンク魂へのオマージュとして、また、その精神を21世紀へ引き継ぐ公的なセレモニーとして、あまりにも爽やかなヴィヴィアンのポートレイトとともに、ロンドンの街を、半年近くの間彩色した。 展示空間は、クロニクルに二つに区切られ、明るい照明で強いスローガンが目立つ「The Early Years」と、艶やかな明かりに成熟したドレスが並ぶ「Maturity」に分かれた。ヴィヴィアン・ウエストウッドという女性自身と、彼女を巡る同志のつながり、彼女が置かれ、作り上げた環境、そのアイデアの資源が、充分な数のドレスと、充分な数の彼女の言葉が引用された丁寧な文章で綴られていく。そんなに大きくはない会場に、愛され理解され支持されたデザイナーの展覧会であることが、隅々まで感じられるような、心のある構成が繰り広げられる。加えて、豪奢なパーティがファッションの華麗で心をさらえば、洋服作りのプロセスを見せたり、紙で洋服を作るような、幾つものワークショップやレクチャーが、愛されて通われる装飾美術館の下地環境を、支え整えた。 若さ特有の反骨精神と潔い身振りが、一定の強度を保ち反復され、ストリートを鳴らし、時代を轟かし、脅かし、一巡りして一国の文化を深める新しいひだとなり、不動の価値ある美意識として愛されるまで。 ロンドンという土壌で育った、正真正銘のストリートカルチャーというコンテクスト、“由緒正しき”装飾美術館ヴィクトリア&アルバートミュージアムというコンテクストが抜け落ちて、東京で見るヴィヴィアンのポートレイトが、様相違って見えるのは仕方のないこと。彼女のドレスに会うのに、あなたにいつもと違う道を通るすべはなく、キーンと軋む耳をぐっと堪え、エレベーターでまっすぐ52階へ昇る。52階はストリートから少し遠く、文化を香るには見晴らしがよすぎる。彼女のオレンジ色の髪は、晴れた東京の冬空にも、 こちらで、ヴィクトリア&アルバートミュージアムでの展覧会内容が、細かく再現されているので、東京展の補足と参考に。 初出:Tokyo Art Beat website, November 2005
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