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イザベル・ユペール展 Woman of Many Faces
松原 慈
タイトルと内容を初めて目にしたときは、軽い冗談のように感じた。「フランスの女優イザベル・ユペールだけを被写体に、72人の写真家が撮影したポートレイトを集めた展覧会」と言われても、ちっともピンと来なかった。 彼女が素晴らしい女優だという事実と、数々の著名な写真家が撮った彼女のポートレイトは、一緒にすると、どちらの価値も下がるような気がしたのだ。 でも気になって、もらった案内を何度も眺め、展覧会の様子をなんとなく想像してみた。意外にも、想像すればするほど、その展覧会はずいぶんと美しいものに感じられた。だってよく考えてみれば、その女優は他の誰でもなく「イザベル・ユペール」、『ガラスの仮面』の主人公のような彼女なのだから。 映画という、切り取られた2時間の物語から、さらに切り取られた一瞬として、カメラの捉えた女優の顔からは、ヒストリーや前後関係を読み取るのが困難で、人間らしいリアリティが削られたような不自由さがある。その不自由は、そのまま「女優」のリアリティに昇華し、この展覧会には、張りつめた美しさに、ちょっとした哀愁さえ漂っているのだった。 初出:Tokyo Art Beat website, July 2006
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